新電力各社が新規顧客獲得を縮小する動きが強まっている。卸電力取引所の取引価格高騰の影響が背景にある。

卸電力取引所の取引価格は燃料価格の上昇などを受けて2021年11月頃から高止まりが続いている。2021年11月の東京エリアプライス月間平均は19年同月の2倍近い水準だ。

11月12月1月
19年度9.03円8.71円8.17円
20年度5.35円14.35円66.53円
21年度17.59円18.04円23.95円

自前の発電設備を持たない多くの新電力(小売電気事業者)は、電力の調達を卸電力取引所に頼らざるを得ない。家庭向けの低圧電力の販売価格は平均的に1kWhあたり26円程度とされているが、2022年1月の卸電力取引所の取引価格は平均23.95円。託送料金などの諸経費を加えると、新電力にとって「売れば売るほど損」となる水準だ。

大幅なコスト増を受け、新電力各社は新規契約の獲得を縮小する動きを強めている。21年秋以降、新規契約の獲得を一時停止・終了した主な新電力をまとめた。

社名備考
サニックス2021年12月9日より新規契約の受付停止
電力市場の市場状況の変化による
スマートテック2月1日より一部プランの新規契約の受付停止
Japan電力一部地域の新規契約の受付停止
電力市場の価格高騰による
ボーダレス・ジャパン1月7日よりオール電化プランの新規契約の受付停止
卸電力取引所の取引価格高騰のため
横浜環境デザイン2月17日より「夜安プラン」の新規契約の受付停止
電力市場の価格高騰のため

1月~3月は新電力にとって年間で最も新規契約の獲得が見込める「需要期」にあたる。この時期に営業活動を縮小することは新電力にとって背に腹は代えられない苦渋の決断といえる。

ある新電力の関係者は「3、4月には新規営業を再開できるよう調整を進めている」と語るが、取引所の価格変動の影響を受けない相対契約による調達も新電力同士の「奪い合い」となっている。サニックスは決算説明資料の中で「相対電源の調達不足」を挙げており、新電力にとって厳しい事業環境は来年以降も継続するリスクが高まっている。