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実用化!ナトリウムイオン電池のメリット・デメリット | 何がスゴい?リチウムイオンとの比較も

モバイルバッテリーとして既に製品化されたナトリウムイオン電池。従来型のリチウムイオン電池と比較してどのようなメリット/デメリットがあるのか、難しい用語無しにわかりやすく解説します。

ナトリウムイオン電池とは?

次世代型の電池の一つとして注目を集める技術です。

2025年3月にエレコムが世界初となるナトリウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーを発売しました。内部のバッテリー自体は中国の大手バッテリーメーカーから調達していると公表されています。調達できる量に限りがあり供給量が少ない影響もあるようですが、ネット通販では品薄が続き注目を集めています。



ナトリウムイオン電池のメリット

従来型のリチウムイオン電池と比較したメリットを解説します。

寿命が長い 充放電回数10倍

充電式の電池は、充放電を繰り返すことで充電できる電気の量が減少していきます。リチウムイオン電池の場合、500回充放電すると新品の時の80%以下にまで容量が減少し、「寿命」を迎えます(使用できなくなるわけではない)

ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池の10倍となる5000回と長寿命を実現しています。

寒い場所でも使える

リチウムイオン電池は寒い環境下では性能が大きく低下します。0度以下では極端に性能が低下するため、例えばスキー場ではスマホやデジカメの電池持ちが極端に悪くなります。性能低下を防ぐため、中上級クラスの電気自動車ではバッテリーを加温するヒーターが備えられています。

一方、ナトリウムイオン電池は-35度程度までは性能低下少なく使用することが出来るとされています。低温環境下での使用に適していると言えます。

また高温環境下での性能低下もリチウムイオン式より少ないとされています。リチウムイオンの推奨使用環境は35度かせいぜい40度程度ですが、ナトリウムイオン電池は50度程度まで対応しています。

発火・爆発の危険が少ない

リチウムイオン電池は強い衝撃が加わると爆発的に炎上します。家庭ごみに紛れて捨てられ、ゴミ収集車に投入された時に炎上しゴミ収集車が全焼する事故も全国で相次いでおり、市区町村にリチウムイオン内蔵製品の回収を行うよう環境省が2025年春に通達を出したところです。

ナトリウムイオン電池はその性質上、リチウムイオンのような爆発的な炎上が起こりづらいとされており、安全性が高いです。

レアメタルを使わない

リチウムイオン電池の製造にはコバルトやマンガン、リチウムなどのレアメタルが欠かせません。レアメタルはその名の通り、希少な金属で産地が特定の国や地域に偏っています。

例えばリチウムイオン電池で使われるリチウムはオーストラリア、チリ、中国で主に産出されています。一方ナトリウムイオン電池のナトリウムは海水から取り出すことができ、豊富に存在しています。



ナトリウムイオンバッテリーのデメリット

本体価格が高い

ナトリウムイオン電池は従来型と比較して本体価格が割高です。2020年代に入り実用化された新技術でまだ量産化が進んでいないことが原因の一つといえます。リチウムイオン電池は1991年にソニーがビデオカメラ用バッテリーとして初めて実用化し30年以上の歴史がありますが、ナトリウムイオン電池は世の中に出てきたばかりの新技術です。

ただし、「寿命」がリチウムイオン型の10倍ということを考えると既に使い方によってはリチウムイオン型より低価格という見方もできます。

9000mAhのナトリウムイオンモバイルバッテリーの実売価格は記事執筆時点で約1万円であるのに対し、同程度の容量のリチウムイオンモバイルバッテリーは3千円前後です。理論上10倍使える製品が、3倍の価格で購入できると考えると既にお買い得感さえあります。

大きく、重い

技術開発が進んでおり年々改善されていくことが予想されますが、リチウムイオンバッテリーと比較してナトリウムイオンバッテリーはエネルギー密度が低いです。分かりやすく言うと、同じ量の電気を貯めるのに必要なバッテリーの大きさが大きく・重くなるということです。

例えばナトリウムイオンモバイルバッテリーは350gですが、同程度の容量の代表的なリチウムイオンモバイルバッテリーは180g程度です。この点は特にモバイル機器での利用には支障となるでしょう。土地代が安い地方部での据え置き型の蓄電池用途では問題になりづらいと思います。

リチウムイオンとそれぞれ棲み分けが進んでいくと予想します。

廃棄時はメーカー回収が必要

リチウムイオン電池内蔵製品についても、最近まで自治体によるゴミ回収の対象外とされているケースが多くあり、実は捨てる時に厄介な製品でした。環境省が2025年3月に自治体に対し通達を出したことで、今後はリチウムイオン内蔵製品を捨てやすくなることでしょう。

一方、ナトリウムイオン電池は2025年春現在において多くの自治体でゴミ回収の対象外となっています。既に発売されたエレコムのナトリウムイオンモバイルバッテリーは、不要になった時はエレコムが回収してくれるようです。

現在の量産品は中国メーカーのみ

2025年3月にエレコムが世界初となるナトリウムイオンモバイルバッテリーを発売しましたが、内蔵しているナトリウムイオン電池は中国メーカーから調達していると公表されています。2021年に中国のバッテリー大手CATLがナトリウムイオン電池を実用化しており、CATLもしくは他の中国企業から調達しているものとみられます。

日本企業も日本電気硝子などがナトリウムイオン電池の実用化に向け研究開発を行っていますが、記事執筆時点では製品化・量産化には至っていません。

リチウムイオン電池は日本のメーカーのシェアは年々低下しているものの、初めて実用化したのはソニー、実用化に必要な研究開発を行ったのは旭化成の吉野彰氏とされており、同氏はノーベル化学賞を受賞しています。



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