法定電気設備点検による停電にどう対処するのか。タワマンに居住し管理組合の副理事長を務める私が解説します。
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3年に一度の電気設備点検で停電する
タワーマンションや一定規模以上の大型マンションでは、3年に一度の頻度で「停電」があります。これは法律により定められた電気設備の点検により生じるもので、設備を維持していく上で必要不可欠なものです。法律による点検義務は「年1回」となっていますが、設備の信頼性が高いなど条件を満たすと停電を伴う点検は「3年に1度」に延長することが出来ます。
停電の時間は数時間程度で済む場合もあれば、「朝から夕方まで」掛かる場合もあります。詳細は管理会社等からの案内を確認してください。
法定点検中に起きること
法定点検に伴う停電によって起こることをまとめます。
電気を一切使うことが出来ない
まず、停電中は建物全体で電気を使うことが出来ません。各住戸(専有部)はもちろん、共有部分でも電気を使うことが出来ません。建物全体が「機能停止」することになります。
建物によっては、共用部だけ停電する(専有部は停電しない)場合や、機械式駐車場だけ使える場合もあります。
水道やネットも停まる
大型マンションでは水道水を上階まで送るためにポンプを使用していることが多いです。そのようなポンプ類も電気で動いており、停電により停止するため水が止まる場合があります。トイレを流すこともできません。
またインターネット類も建物側の機器への電力供給が停止するため、使えなくなる場合があります。固定回線に接続した自宅内のWiFiルーターに、バッテリーを接続しても使用できないと考えてください。自宅でパソコンを使う場合は、ノートPCフル充電+モバイルルーターかテザリングが必要です。
エレベーターや機械式駐車場も停止
停電中はエレベーターや機械式駐車場も停止します(引き込みが別系統でなければ)
40階建て以上のタワーマンションでもエレベーターは停止します。非常階段は使用可能ですが、高層階まで上り下りするのは現実的とは言えないでしょう。
タワーマンションなどでは非常階段が建物の内部に設けられている場合があります(内階段) 停電中は非常階段の照明も消灯します。バッテリー駆動による非常用照明は30~60分しか持たないため、多くの場合法定点検による停電の間にバッテリー切れとなり非常階段は「真っ暗」になる場合もあります。
機械式駐車場も設備への電力供給が停止するため、動きません。車を使用する場合は事前に車を出しておく必要があります。電動ゲートがある場合は電動ゲートも動かなくなりますが、停電前に開放する場合もあるのでその辺りは事前に管理会社に確認してください。
オートロック等も停止します。宅配便や来客の予定がある場合は、事前にスケジュール調整しましょう。
法定点検による停電を乗り切る方法
自宅から出る
基本的に、停電が開始するまでの間に建物の外に出ておくことが無難です。
自宅にいても数時間以上、冷暖房や照明だけでなくトイレも使うことが出来ません。以下で自宅に留まる方法は解説しますが、出かけてしまった方がむしろ安上がりです。
法定点検の告知は数ヶ月前から実施されることが多いので、事前に休日を調整して出かけたり、旅行に行くのもおすすめです。停電が始まるとエレベーターが停止するため、停止開始時刻までに外に出るようにしてください。タワーマンションの高層階でエレベーターが使えないと下に降りるだけで一苦労です。
介護や医療的ケアが必要な方がいる場合は、事前に主治医などに相談してください。
防寒・暑さ対策
それでも自宅に留まりたい場合にネックとなるのが、防寒・暑さ対策です。エアコンが使えないので、夏は暑いですし冬は寒いです。
電源不要の暖房器具としては、カセットコンロのボンベを燃料とするカセットボンベストーブというものがあります。法定点検があるような鉄筋コンクリート造など堅牢な建物であれば、5~6畳の部屋でカセットボンベストーブを使うことで寒さをしのぐことが出来ます(東京のような温暖地であれば) 地震などの防災対策にもなります。私は自宅で一台備蓄しています。2Lのペットボトル6本の箱よりも小さいので、保管場所にも困りません。
関連記事:電気を使わない暖房器具の一覧
夏場については、凍らせたペットボトルやクールネックバンド、ハンディファンなどを複数組み合わせるのが安上がりで手軽だと思います。だたし電源無しで部屋を涼しくすることは困難であるため、真夏の停電時はエアコンが効いた場所に避難するのが最も安全だと思います。
冷蔵庫・冷凍庫の中身はどうするか
一番厄介なのが冷蔵庫の中身です。冷蔵庫のドアを一切開閉しなければ冷たい状態を一定時間維持できますが、とはいえ2~3時間が限界と言われています。法定点検による停電はそれ以上の時間(朝9~17時)に及ぶこともあり、冷凍室の中のものが溶ける恐れがあります。
解決策としては以下の2つがあります。
- 溶けて困るものは事前に消費しておく
- ポータブル電源に接続する
温まって困るものは消費しておく
アイスクリームや冷凍食品、生肉などは前日までに消費しておくのがトータルコストとしては最も安上がりです。とはいえ、特にファミリー世帯の場合は停電の1週間くらい前から計画的に食料を消費していく必要があるため、調整が面倒と感じるでしょう。
製氷室の氷は一旦すべて処分しておいた方がよいです(一度溶けてから再凍結すると一つの大きな氷になってしまう)
ポータブル電源に接続する
次善策としては、冷蔵庫をポータブル電源に接続するという方法です。スマホ用のモバイルバッテリーを大きくしたような、ポータブル電源という製品があります。中身はスマホの電池と同じ、リチウムイオン電池です。ポータブル電源の本体にはコンセントが付いており、キャンプなど屋外で家電製品を使うために活用されている製品です。
ポータブル電源は300~400W程度の電源を出力することが出来ます。一方、冷蔵庫はファミリー向けの大きなものでも定格消費電力が300W以下のものが多いので、ポータブル電源で駆動できます。稼働時間については今後、手持ちのポータブル電源で実際に試してみたいと思いますが256Whのもので約8時間使えると予想しています(カタログスペック上の理論値)
ポータブル電源では容量にもよりますが、購入する場合で3万円前後から、宅配レンタルも可能で1週間4千円~で借りることが出来ます。災害時にも役立つので、私は購入して備蓄していますが法定点検だけ乗り切ればよいという方にはレンタルがおすすめです。ゲオあれこれレンタルでレンタルできます。
一般的な家庭用冷蔵庫(三菱電機MR-WX52H:517L容量、年間消費電力265kWh)を接続した場合の、ポータブル電源の「電池持ち」の目安は以下のとおり(1時間で31Whを消費すると想定)
ポータブル電源は自治体がゴミとして引き取ってくれないケースが多いため、購入する場合は使用後に回収してくれるメーカーのものを選ぶことをおすすめします。AnkerやJackeryはメーカーが回収してくれると明言しています。
熱帯魚やペットの温度管理
加温が必要な熱帯魚や爬虫類を飼育している世帯では、その対策も必要です。熱帯魚の場合はクーラーやヒーターによる加温・冷却に電気が欠かせません。犬猫やウサギでも、真夏にエアコン無しの部屋に長時間置いておくことは難しいでしょう。
移動が難しい熱帯魚などのペットの加温・冷却については、冷蔵庫の対策のところでも紹介したポータブル電源が選択肢の一つになると思います。クーラーやヒーターをポータブル電源に接続することで、停電時にも冷却・加温が一定時間可能です。必ず事前に試してみることをおすすめします。
夏場は水槽用のクーラーを使っても室温の上昇により水温が上がる可能性があります。その点はよく考慮して検討してください。
移動が可能なペットは飼い主と共に別の場所に避難するのが安全ではないでしょうか。ペットホテルを利用するのも選択肢として検討してください。
チェックリスト
最後に、全館停電を迎える前に確認しておくべき点、用意しておくものをまとめます。
準備しておく「こと」
- 冷蔵庫の中身の整理
- 当日の予定調整(出来るだけ家を不在にする)
- 当日は停電するまでに家を出られるように準備する(洗濯なども要注意)
- 介護、医療的ケアが必要な人への対応の検討
- 立体駐車場から車を出しておく
- 宅配便などの来客の調整
準備しておく「もの」
- (冷蔵庫をカラにしない場合)ポータブル電源
- (在宅する場合は)防寒・暑さ対策グッズ
- (在宅する場合は)ポータブルトイレ
- (在宅する場合は)熱源を使わない食事、飲料
- (在宅する場合は)暇つぶしグッズ(本、フル充電のスマホ等)
- (在宅勤務する場合は)ノートPC+モバイルルーターorテザリング
冷蔵庫以外の部分に関しては、停電中に不在にすれば用意する必要は無くなるので外出するのが最も良いのではないでしょうか。