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VPP(仮想発電所)を分かりやすく解説します
新聞などのニュースでも目にする機会が増えてきた「VPP(仮想発電所)」というコトバ。これは一体何なのか、一般消費者向けに分かりやすく解説します。
目次
VPPとは
まずはVPPとはどんなものなのか、分かりやすく解説します。
電気を「賢く」使うための新たな仕組み
VPP(仮想発電所)とは、電気を社会全体で「賢く」使うための新たな仕組みです。
電気には需要が時間帯や季節によって大きく変動するという問題があります。
発電所は建設に長い時間を要するため、発電量の限界はそう簡単に変えられるものではありません。VPPは需要量を調節したり、蓄電池から放電するなどして供給を増やすことで、電気を使える「枠」を作り出すことで、あたかも発電所で発電しているかのような効果を得る仕組みです。
例えば電力の需給が逼迫するタイミングで蓄電池に貯めた電気を放電してもらう、エアコンの設定温度を遠隔操作で変更して設定温度を変更するといった形で自動制御を行い、需要を減らし・供給を増やす操作を行います。
協力すると電気代の割引などの経済メリットも
VPPに参加することで、貢献度に応じて電気代の割引などの経済的メリットを得ることが可能です。
今後は蓄電池や電気自動車など、VPPで大きな役割が期待されている機器の普及が見込まれていますが、そうしたものを所有している人がVPPに参加することで、報酬を得ることが可能となります。
具体的に何をするの?
では、VPPでは具体的には何をするのか実例を示しながら解説します。いずれも、それぞれの設備を持つ人が手動で自発的な操作をするのではなく、システムで自動的に操作を行うのがVPPの利点です。
蓄電池・電気自動車を使った「蓄電」
最も大きな効果が期待出来るのが、蓄電池や電気自動車、あるいはプラグインハイブリッド車です。蓄電池や電気自動車(大型の蓄電池を搭載している)は、大量の電気を蓄え、そしてそれを放電することが出来ます。
例えば電気が不足している時に、VPPのシステムを通じて蓄えた電気を送電網に流してもらう操作を行います。そうすることで、電力不足を解消出来ます。
逆に、電力が余っている時にも活躍が期待されています。
最近は太陽光発電の発電量が増えすぎたことで、せっかく発電した電力を送電網に流さず捨ててしまうことが一部地域では頻繁に行われています。そうした電気が余っているタイミングで蓄電してもらうことで、「電力余り」を緩和します。
エアコン・エコキュートを使った「省エネ」
エアコンやエコキュートを操作することで、電力の需要を抑えたり、あるいは別の時間帯に「移動させる」ことがVPPによって行われます。
例えば電気でお湯を沸かすエコキュートは、深夜にまとめて数百リットルの熱湯をつくってタンクに貯めておくのが一般的です。しかしVPPを使うことで、電気が余っている別の時間帯にお湯を沸かすことで、「電力あまり」を緩和することが期待されています。
また、VPPはエアコンなどの家電製品との連携も期待されています。
例えば電力需給が逼迫するタイミングで冷房の設定温度を一度上げることで消費電力を抑えたり、照明を暗くするといった操作が行われます。
これまでのような自発的な節電ではなく、システムを通じて自動的に、不便の無い範囲で節電に協力するというイメージです。
太陽光発電やエネファームを使った「創エネ」
家庭用燃料電池「エネファーム」は、燃料電池を使ってガスからお湯と電気をつくる仕組みです。日本でも徐々に普及が進んでいます。
エネファームがVPPと連携することで、例えば電力需給が逼迫するタイミングで「発電」をしてもらい、作った電気を送電網に流すなどの活用が期待されています。仮想ではなく、必要なタイミングで実際に発電を行います。
いつから始まるの?
既に開始しているサービスもある
VPP的なサービスとして、既に中部電力が2019年2月から「これからデンキ CO-エネ」というサービスを開始しています。
デンソー製のHEMSや蓄電池などを設置している世帯が対象のサービスで、蓄電池やエコキュートの制御に協力することで報酬(電気代の割引)が受けられるというものです。
本格普及は2020年代から?
VPPは現状では国内外で実証実験が進められている段階にあり、広く利用できる状況ではありません。利用にあたっては対応している機器(HEMSや蓄電池など)を導入している必要もあることから、今後数年内にVPPが広く普及する可能性も低いと言えます。
ですが今後は日本でも蓄電池や電気自動車の普及が急速に拡大していくと見込まれていますし、また企業がVPPのサービスを提供しやすくなる制度改正も行われる見通しです(需給調整市場・容量市場の創設など)
2020年代には、日本国内でも少しずつ普及していくのではないでしょうか。