VPP(仮想発電所)の採算性は

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VPPは儲かるのか


 参加することで報酬や電気代の割引が受けられるVPP(仮想発電所) では、そうした経済的メリットはどれほどのものなのか、また諸々の初期費用を回収することは出来るのか、実際のサービスを紹介しながら解説します。



VPPの参加への報酬は? 中部電力編


 VPP的なサービスとして、中部電力が2018年から「これからデンキ」というサービスを提供しています。このサービスに参加することで得られる報酬をもとに解説します。


 なお、いずれも報酬は電気代からの割引という形で適用されます。


基本料金


 これからデンキに参加することで、基本料金として毎月50円分の割引があります。


 これは実際に制御が行われるかとは関係なく、毎月固定額として発生するものです。また、機器の数なども関係ありません。


蓄電設備の制御で30分○○円


蓄電池

蓄電池(右)

 蓄電池、あるいは電気自動車のバッテリーを充放電するV2Hシステムの制御に応じることで、30分あたり30円の割引が受けられます。


 電力の需要が逼迫している時には蓄電池から放電をし、逆に需要が少ない時には充電をすることで貢献をします。


V2Hで接続した日産リーフ

V2Hに接続した日産リーフ

全館空調の制御で30分○○円


 全館空調のエアコンの自動制御に応じることで、30分あたり10円の割引となります。


 なお、制御は設定温度を1度変更することで行われるため、過度に寒くなる・暑くなるといったことはないような形で制御されます。


エコキュートの制御で30分○○円


 電気でお湯を沸かすエコキュートの制御に協力することで、30分ごとに20円の割引が受けられます。


 エコキュートには電気を放電する機能は無いため、電気の需要が少ない時に需要を増やす目的で操作が行われます。需要が少ないタイミングでお湯を沸かし、電力需要の平準化に貢献します。


エコキュート

エコキュートは沸かしたお湯をタンクに貯める

本当にお得なの?


初期費用を考えると・・


 これからデンキの公式サイトには、1ヶ月の買取額の例として170円という金額が示されています。季節によっては制御が多く入り、これよりも高い金額になる場合もありますが、少なくとも月に何千円もメリットを得られるサービスにはならないでしょう。


 また、VPPを利用するにあたっては、HEMSや蓄電池などの高価な機器が必要となります。これらを新たに導入することを考えると、少なくとも「元を取る」というのは難しいと言えます。蓄電池などの設備に必要性を感じて導入し、その購入金額を「少し取り戻せる」という構えで利用するとよいでしょう。


エネファーム

エネファームは車と同じ程度の価格

「電気代」にも注意が必要


 「これからデンキ」の場合、中部電力の電気料金プランを契約していることが利用条件となっています。


 電力自由化では様々な会社が参入し、その料金水準には大きな差があります。例えば50A・月400kWhという条件で試算をすると、中部電力の中で最も安くなる「おとくプラン」と、新電力会社の中で最も安くなるプランとでは年間の電気代に12773円の差があります(2019年11月10日時点) 実に、月額1000円もの差です。


 このケースの場合、VPPを利用せずに電気料金プランのみを他社に変更した方が、トータルで「お得」になる可能性もあります。セット契約にする場合は必ずトータルでお得になるのかをよく確認する必要があります。


今後の動向に注目


 今はまだVPP自体が実証実験段階と言える状況です。また、数年内にはVPPにとって追い風となる「容量市場」「需給調整市場」の開設も予定されており、これが出来ることでVPPによって生み出された需給変動分を市場で売買出来るようになります。


 今後、VPPにとって有利な環境が整っていくことで、利用者が得られる経済的メリットも大きくなっていく可能性は充分にあります。




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