VPPにはどんなメリット・デメリットがあるのか
日本でも普及が期待されているVPP(仮想発電所) VPPにはどのようなメリット・デメリットがあるのか、分かりやすく解説します。
目次
VPP(仮想発電所)のメリット
まずはVPPのメリットを紹介します。
経済的メリットを得られる
VPPを導入する家庭や企業は、その貢献に応じた報酬や、電気代の割引といった経済的メリットを得ることが可能です。
蓄電池や電気自動車、太陽光発電、あるいはVPPに対応したエアコンやエコキュートといった設備を活用して報酬を得ることができ、購入資金の一部をまかなうことが可能となります。
社会全体で電気を「賢く」使えるようになる
VPPを活用することで、社会全体で電気を「賢く」使えるようになります。
- 需要ピーク用の火力発電所を削減できる
- 送配電網を効率よく運用できる
- 太陽光発電を有効活用できる
電気は事実上「貯められない」ため、年間の最も需要が増えるタイミングにあわせて発電所を用意する必要があります。年間8760時間のうち、電力需要のピーク88時間(約1%)の需要をまかなうために、原発4基分に相当する384万kW分の発電所が温存されていると経産省の資料にあります。
VPPを活用することで電力需要の変動をなだらかにすることが出来、こうしたピーク時にしか稼働しない発電所(主に石油火力発電所)を削減することが可能となり、結果として電気代が安くなる可能性があります。
また、電気を流す送配電網についても、ピーク時の容量にあわせて用意されています。VPPによって需要の変動をなだらかにすることが出来れば、送配電網の容量を縮小することが出来る可能性があります。
エコに貢献できる
現在、九州など一部地域では太陽光発電が「増えすぎた」ことで、せっかく作ったクリーンな電気を送電網に流さず捨ててしまう「出力制御」が行われています。需要に対して供給が多すぎるため、やむを得ない対応です。
VPPが普及することで、捨てられてしまっている太陽光発電の電気をより有効に活用できるようになるでしょう。VPPを利用することで、太陽光の出力制御をせざるを得ないタイミングで電力の需要を「増やす」操作をすることが可能となります。逆に、他の時間帯の使用量を減らせるので火力発電による発電を減らすことが出来ます。電気を使う時間帯をシフトすることで標準化するのがVPPの役割の一つです。
更に、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーは発電量が安定しないといった問題点が指摘されていますが、それを補う対策としてもVPPの役割が期待されます。
また、蓄電池や電気自動車といった製品の導入を後押しする効果も期待できるため、環境対策の推進に期待できます。
VPPのデメリット
続いて、デメリットを紹介します。
導入には多額の初期費用・工事が必要
家庭や企業でVPPを利用するには、専用の設備が必要となります。
具体的にはHEMSのような専用機器や、あるいは蓄電池や電気自動車、HEMSに対応したエアコンなどの家電製品があります。申し込むだけで誰でも利用できるものではありません。
対応設備が無い場合は新たに設置する必要があり、費用や工事が必要となります。
ビジネスとして成立するか未知数
VPPがビジネスとして成立するかは、現時点では未知数と言わざるを得ません。理由は2点あります。
まずは必要な機器を導入している世帯が少ない点です。
VPPの利用に必要なHEMSの世帯普及率は2013年末時点でわずか0.3%と言われており、普及が進んでいません。2020年時点でも普及率は3%にとどまるとの予測もあります。サービスを提供しても、そもそも利用できる人が限られている点は大きな課題と言えます。
また、収益性の点でも課題があります。
VPPのサービスを提供する業者は、電力の価格の変動を利用して利益を上げます。ですが夏や冬のシーズンは別として、需要が多くない時期は変動幅がそれほど大きくないため、充分な収益を上げられるのかという点には疑問が投げかけられています。