PinTでんきの値上げを解説(2023年4月)
2023年春に電気料金を値上げするPinTでんき。値上げの詳細と契約者が取るべき対処方法を電力自由化の専門家としてこれまでに数多くのメディア取材を受けてきた私が、分かりやすく解説します。
目次
大幅に値上げするPinTでんき
まずはPinTでんきの値上げの概要を解説します。
2023年4月分から大幅値上げへ
PinTでんきは2023年4月分から電気料金を値上げします。値上げの内訳は以下のとおり。
- 燃料費調整の上限廃止
- 電力量料金単価の引き上げ
基本料金を引き下げる一方、燃料費調整の上限廃止と電力量料金(電気を使った量に応じて課金される部分)が引き上げられます。
現在、燃料価格高騰により毎月の電気代に加算される燃料費調整が高騰しています。PinTでんきはこれまで、新電力としては珍しく大手電力の従量電灯と同様に燃料費調整に上限を設けていました。これを撤廃することで例えば東京電力管内の燃料費調整単価は5.13円/kWhから13.04円に値上がりします(2023年2月分単価の場合) 月300kWhの電気を使う一般家庭では、これだけで2373円の値上げとなります。
燃料費調整単価 2023年4月分 |
電気代の差 月300kWh | |||
---|---|---|---|---|
上限あり | 上限無し | 差 | ||
北海道電力エリア | 3.66円/kWh | 8.57円/kWh | 4.91円/kWh | 1473円 |
東北電力エリア | 3.47円/kWh | 11.80円/kWh | 8.33円/kWh | 2499円 |
東京電力エリア | 5.13円/kWh | 10.25円/kWh | 5.12円/kWh | 1536円 |
中部電力エリア | 5.36円/kWh | 9.93円/kWh | 4.57円/kWh | 1371円 |
北陸電力エリア | 1.77円/kWh | 9.34円/kWh | 7.57円/kWh | 2271円 |
関西電力エリア | 2.24円/kWh | 9.67円/kWh | 7.43円/kWh | 2229円 |
中国電力エリア | 3.19円/kWh | 13.77円/kWh | 10.58円/kWh | 3174円 |
四国電力エリア | 2.55円/kWh | 10.76円/kWh | 8.21円/kWh | 2463円 |
九州電力エリア | 1.94円/kWh | 7.56円/kWh | 5.62円/kWh | 1686円 |
沖縄電力エリア | 3.98円/kWh | 17.32円/kWh | 13.34円/kWh | 4002円 |
それに加え、電力量料金の単価を引き上げます。これまで主要な料金プランでは使用量が増えるごとに3段階で料金単価が上がる料金体系(大手電力従量電灯と同様)を採用していましたが、使用量に関係無く一律の料金単価とします。東京電力管内の料金単価はこれまで19.88〜30.57円/kWhとしていましたが、値上げ後は41.13円となり全てのユーザーで大幅な値上がりとなります。
値上げの実施は2023年5月請求分(4月検針分)からです。分かりやすく言い換えると「2023年3月の途中」以降に使った分から値上げされます。各使用場所によって異なる「検針日」によって適用のタイミングが異なりますが、3月に行われる検針日から値上げされます。
値上げ幅は?電気代への具体的な影響
東京電力管内で30A契約、月300kWhの電力を使用するケースで値上げの影響を解説します(アカウント割と再エネ賦課金、政府電気代補助金を含まない 2023年2月分燃料費調整単価、燃料費調整の計算方法は変わらないものとした)
電気代(月) | |
---|---|
PinT値上げ前 | 9549円 |
PinT値上げ後 | 17023円 |
東電従量電灯現行料金 | 9549円 |
東電従量電灯値上げ申請料金 | 12759円 |
電気代がこれまでの1.78倍になる計算です。
電気の使用量が少ないケース(一人暮らし世帯など)では特に値上がり幅が大きくなる傾向があるので、2倍近く割高になるケースもあると思います。
なお、PinTでんきはこれまで大手電力の従量電灯と同水準の料金体系でした。大手電力従量電灯でも値上げが予定されていますが、値上げ幅は1.3〜1.4倍程度なのでPinTでんきと比べると値上げ幅は小さくなるはずですし、大手電力従量電灯の値上げが予定されていない地域でもPinTは値上げを実施します。
値上げ幅は大きなものとなりますが、PinTでんきはこれまで燃料費調整の上限を維持していたため他社と比べて電気代の上昇が抑えられていた部分があります。他の新電力や大手電力の自由化向けプランは2022年中に続々と上限の維持を諦めて値上げに踏み切っています。
契約者が取るべき対処方法は
契約者が取るべき対処方法を解説します。
燃料費調整に上限がある他社プランに切り替える
燃料費調整に上限を設定している他社の料金プランへの切り替えを推奨します。
このタイミングで切り替えるのであれば、大手電力各社の「従量電灯」への切り替えがおすすめです。一部地域では値上げが予定されていますが、値上げされてもPinTより安くなるケースが多いでしょう。また大手電力従量電灯の値上げが予定されていない地域(現時点では中部、関西、九州電力管内)では大手電力従量電灯がPinTより大幅に安くなります。
大手電力の値上げ実施後に再検討する
大手電力各社が従量電灯を値上げする地域では、大手電力の値上げ実施前後に再度割安な料金プランを探すことを検討してください。
PinT以外の多くの新電力各社も、大手電力の値上げに追随して値上げする可能性が大きいですが、値上げ後に大手電力従量電灯より割安な料金プランが登場する可能性もあります。
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