太陽光発電を増やす意義とメリット

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太陽光発電のメリットを再確認しよう


 太陽光発電のメリットと言われると、真っ先に思い浮かべるのが「エコ」ですが、実はそれだけではありません。太陽光発電の導入を増やすメリットを、あらゆる角度から検証して整理します。



環境対策の面から


 まずは環境やエコの面でのメリットを整理します。


CO2排出量を減らす


 太陽光発電は発電時にCO2を排出しません。


 製造時や廃棄時にCO2が発生するとの批判もありますが、ライフサイクル全体で見ても1kWhあたりの排出量は17〜48g程度と、火力発電(519〜975g)と比べて遥かに少ないです。また、1〜2年稼働すればライフサイクル全体で排出するCO2量が削減量を上回ります。※いずれも産業技術総合研究所資料より


 太陽光発電による発電が増え、火力発電による発電が増えることでCO2排出量を大幅に減らすことが可能です。


太陽光発電はCO2排出量を大きく減少させる


大気汚染の減少


 日本の電力は80%以上が火力発電によってまかなわれています。


 国内の火力発電の排ガスには厳しい環境基準が設けられているものの、汚染物質を全く排出していないわけではありません。電気事業連合会の調べによると、国内大手10社と電源開発の平均排出量は硫黄酸化物と窒素酸化物がそれぞれ1kWhあたり0.2gとなっています(2013年度)


 例えば一般家庭で使われる火力発電の電気が毎月300kWhとすると、硫黄酸化物と窒素酸化物を毎月120g排出していることになります。


 ちなみに、硫黄酸化物は酸性雨や四日市ぜんそくなどの公害病の原因に、窒素酸化物は光化学スモッグなどの原因物質とされています。また、中国で深刻化している「PM2.5」は石炭火力発電から排出されるものが多いです。


 太陽光発電をはじめ、再生可能エネルギーを増やすことでこうした汚染物質を減らす効果が期待できます。


太陽光発電は大気汚染を減少させる


省エネを促す


 意外に感じるかもしれませんが、太陽光発電が増えることで間接的に省エネを促す効果が期待できます。


 日本では太陽光発電を導入する際に、固定価格買取制度を利用することが多いです。固定価格買取制度を利用することで、発電した電気を高値で買い取ってもらえるという制度です。


 買取費用は電気を使う全ての人が「再生可能エネルギー発電賦課金(再エネ賦課金)」として負担しています。ちなみに2019年度は1kWhあたり2.95円なので、世帯あたり毎月800円以上にのぼります。


 太陽光発電が増えて再エネ賦課金が上昇することで実質的な電気代が値上がりを続けています。電気代が高くなることで、省エネが促される効果が期待できます。なお、再エネ賦課金は2030年頃をピークに下落する見通しです。




社会的なメリット


 続いて、太陽光発電を導入する社会的なメリットを紹介します。


エネルギー自給率の向上


 日本は化石燃料の95%以上を海外からの輸入に頼っています。原子力発電の「燃料」であるウランも、すべて海外からの輸入です。


 一方、太陽光発電は発電時に燃料を必要としません。パネルの材料は海外から輸入されたり、あるいはパネル自体も海外からの輸入が少なくありませんが、一度設置すれば20年以上は使うことができます。エネルギー自給率を向上させる効果が期待できます。


太陽光発電はエネルギー自給率を向上させる


地方に雇用を増やす


 米国のソーラーファンデーション財団の調査によると、2016年の米国における新規雇用の50人に1人は太陽光発電産業が創出したとしています。


 また、日本でも環境省が公表した資料によれば、太陽光発電の導入拡大による雇用創出効果は2020年に46万人、2030年には59.5万人と推計されています。パネルの製造や設置だけでなく、メンテナンスや「草刈り」でも雇用が生まれます。


 広い土地を必要とする大規模な太陽光発電は、都市部ではなく地価が安い地方部に多く存在します。太陽光発電が拡大することで地方の雇用を増やす効果が期待できます。


エネルギー安全保障に貢献


 化石燃料や原子力発電に使われるウランは、その多くが海外からの輸入に頼っています。日本国内で自給することは不可能です。輸入が長期間滞ることで、停電が発生する可能性があります。


 太陽光発電は発電時に燃料を必要としないため、エネルギー自給率を向上させる効果があり、エネルギー安全保障に貢献すると期待されています。


 また、国際情勢によって大きく変動する資源価格に左右されにくい点もメリットと言えます。


災害時の電源の確保


 太陽光発電は小規模・分散型の電源です。また、適切に設置されたものであれば大地震等の災害にも強いです。


 災害が発生した際の非常用電源としての役割も期待され、指定避難場所となる施設に太陽光発電を設置する動きもあります。また、一般家庭でも停電発生時に、自宅の屋根に設置した太陽光発電の電気を使うことが出来る場合もあります。


真夏の電力不足の解消


 電力需要は季節や時間帯により大きく変動します。特に需要が伸びるのは「真夏の昼間」と「真冬の夕方〜夜」です。


 太陽光発電は太陽が出ている昼間に多く発電します。真夏の電力需要ピークは太陽が出ている時間帯と重なるため、太陽光発電の導入が増えたこの数年は電力の不足感が緩和しています。2018年の夏は各地で記録的な猛暑となりましたが、世耕経産大臣は「今、節電をお願いする状況には全くない」と発言しました。


分散型エネルギーシステムの実現


 2018年9月に発生した北海道胆振東部地震では、大規模な火力発電所の停止により北海道全域が停電に陥りました。


 地震発生当時、道内の電力需要の半分を担っていた苫東厚真火力発電所が震源から近く、発電を停止したことが「引き金」となったと指摘されています。


 太陽光発電は小規模・分散の電源なので、一箇所が脱落しても電力システムへの影響はとても小さいです。


省エネ投資を刺激する


太陽光発電は省エネ投資を刺激する


 まず、太陽光発電が設置・運用されることによる投資の誘発効果が期待できます。環境省では太陽光発電の導入拡大による生産誘発額は2020年に8.7兆円にのぼると試算しています(メンテナンスなども含めて)


 また、電気代を押し上げると批判の声も小さくない「再生可能エネルギー発電賦課金(再エネ賦課金)」の多くは、太陽光発電の電気を買い取るために使われており、太陽光発電が日本の電気代を押し上げていると言えます。


 しかし、電気代が高くなることで「省エネ投資」の利回りが向上するという見方もできます。削減できる消費電力量が同じでも、電気代が高ければその分削減できる金額が大きくなるからです。


 LED電球や省エネ家電など、家庭でも「省エネ消費」を誘発する効果が期待出来るでしょう。


「安い電源」になりつつある


 太陽光発電といえば発電コストが高いイメージがありますが、その発電コストは世界中で大幅な下落を続けています。海外では他のどの発電方法よりも安いコストを実現した発電所も登場しつつあります。


太陽光発電は安価になりつつある


 日本に目を向けると、2016年時点の発電コストは28.9円/kWhと、10円前後である火力発電などと比べると割高と言わざるを得ません。国家目標としてその高いコストを2020年に14円、2030年には7円まで引き下げることを目標としており、今後10年程度で「安い電源」になる可能性もあります。


 また、固定価格買取制度による買取が終了した卒FITの太陽光発電の余剰電力に関しては、各社が10円前後の価格での買取を表明しており、一部の新電力会社が安価な調達先として注目しています。


問題点もあるが増やすメリットは大きい


 急激な増加に伴い、問題点も多く指摘されるようになった太陽光発電ですが、導入を増やすメリットは決して小さくありません。問題が発生しないよう上手に規制をしながら、今後も導入拡大を続けてほしいと思います。




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