電源調達調整費の計算方法をやさしく解説します
一部の新電力が採用している電源調達調整費。この計算方法をやさしく解説します。
目次
そもそも電源調達調整費とは
まずは電源調達調整費とは何か、分かりやすく解説します。
卸電力取引所の取引価格を転嫁する仕組み
電源調達調整費は、日本卸電力取引所での電力取引価格の変動を電気代に転嫁する仕組みです。
大手電力会社や一般的な新電力の料金プランには燃料費調整制度という仕組みがあります。これは燃料(石油・天然ガス・石炭)の輸入価格の変動を毎月の電気料金に転嫁する仕組みです。参照する数字は燃料輸入価格(財務省の「貿易統計」)となります。
燃料費調整 | 電源調達調整費 | |
---|---|---|
参照する値 | 財務省貿易統計の 原油・LNG・石炭輸入価格 と為替レート |
卸電力取引所の 電力取引価格など |
変動幅 | 調達調整費より 小さい |
かなり大きい ※会社によって異なる |
採用している 電力会社 |
ほとんどの会社 大手電力・新電力 |
ごく少数の会社 |
電源調達調整費は燃料費調整額と同じように毎月変動する単価で計算されますが、計算根拠として参照する数字が異なるため、異なった動き方をします。また、電源調達調整費と燃料費調整額、両方とも請求している新電力も一部存在します。
導入する企業が増加中
2021年秋ごろから電源調達調整費を新たに採用する新電力が徐々に増え、2022年春頃に大きく増えました。
2021年秋ごろから燃料の輸入価格の高騰を受け、卸電力取引所の取引価格が高騰を続けています。新電力の多くは卸電力取引所から電力を調達しているため、調達コストが高止まりし経営を圧迫する事態となっており、その対策として電源調達調整費の導入に踏み切る新電力が相次いでいる状況です。
2022年〜23年上半期は電気代高騰の原因に
高騰している調達コストを顧客に転嫁する仕組みであるため、電力取引価格が高騰している局面では電源調達調整費が高騰し、電気代の請求額が高騰します。
2022年現在、燃料価格の高騰が続いているほか2023年1・2月には深刻な電力不足が懸念されています。電力の需給の逼迫は電力取引価格の高騰に直結し、電力取引価格高騰は電源調達調整費の高騰に繋がるため、少なくとも2022年から2023年上半期は電源調達調整費の高騰が避けられない情勢です。
電源調達調整費の計算方法の仕組み
では、そんな電源調達調整費はどのように計算するのか。新電力によって計算方法が異なる場合もありますが、代表的な計算方法を元にやさしく解説します(卸電力取引所の取引価格をもとに計算しないところもあります)
よくある計算式を見てみよう
電源調達調整費の計算方法としてベーシックな計算式を紹介します。
電源調達調整費は、電源調達調整費「単価」に電気の使用量を掛けて計算されます。電源調達調整費単価の計算方法は以下のとおり。
「調達単価」は卸電力取引所の取引価格の月間平均であったり、3ヶ月分の平均値であったりします。地域ごとに異なる「エリアプライス」を参照することが多いです。取引価格の平均は環境いちばで確認できます。
追加請求基準値は、調達単価がそのラインを超えたら電源調達調整費が発生しますよ、ということで設定された基準値です。同じ新電力でも地域ごとに異なる値を設定していることが多いです。基準値を適宜変更する新電力もあります。調達単価が追加請求基準値を下回る場合は電源調達調整費は発生しません。
実際のデータを当てはめて計算してみよう
実際に東京エリアで月300kWhを使用する場合を想定して、電源調達調整費を計算してみます。まずは調達調整単価を算出してみましょう(追加請求基準値を15円/kWhとする)
(円/kWh 税抜き) | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
---|---|---|---|---|---|---|
2020年 | 8.17円 | 7.59円 | 7.48円 | 6.85円 | 5.75円 | 5.57円 |
2021年 | 66.53円 | 8.29円 | 6.70円 | 7.05円 | 6.98円 | 7.02円 |
2022年 | 23.95円 | 23.36円 | 30.76円 | 21.65円 | 19.50円 | 25.27円 |
上記は過去3年分の東京エリアプライス(東電管内に適用される取引価格)の月間平均です。2022年6月の25.27円/kWhで計算してみると・・
電源調達調整費単価は12.8円/kWhという結果になりました。注意点としては、卸電力取引所の取引価格は税抜価格で表記される場合が多いため、消費税率を掛ける必要がある点は見落としがちです。
電源調達調整費単価から電源調達調整費を計算します。
電源調達調整費は3840円という結果になりました。今回想定した使用量月300kWhは一般家庭の平均的な電気使用量です。東電で300kWhの電気代は約8000円なので、電源調達調整費が上乗せされることで電気代が1.5倍になるイメージです。
新電力によっては(調達単価-追加請求基準値)で求められた数字に50%を掛けるところや、具体的な計算式を示さず不透明な会社もあり、電源調達調整費の計算方法は多種多様ですが、ここでは最もベーシックな計算方法を紹介しました。
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