石油火力発電のメリット・デメリット

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石油火力発電の長所と短所は?


 かつて日本の電力供給の半分以上を担っていた石油火力発電。そのメリット・デメリットを他の発電方法と比較しながら分かりやすく解説します。



日本での石油火力発電の歴史


 メリット・デメリットを解説する前に、日本での石油火力発電の「位置づけ」を紹介します。


電源構成の59%を占めたことも


オイルタンカー

タンカー

 冒頭でも紹介したように、かつて石油火力発電は日本の電力供給の59%を支える「主力電源」だった時期もありました(1970年)


 ですが現在は日本の電力供給の約8.7%(2017年度)と、半世紀の間にシェアを大きく落としています。現在は電力が不足した際のピーク電源として活用される機会が多い発電方法です。


現在は原則として新設が禁止


 日本では1970年代のオイルショック以来、石油火力発電を減らすことをエネルギー政策として進めてきました。代替エネルギーとして太陽光発電や原子力、あるいはLNGを積極的に導入しています。


 発電所の新設も原則として禁止されており、老朽化に伴い石油火力発電は日本各地から少しずつ無くなっているという状況です。


石油火力発電のメリット


 続いて、石油火力発電の利点を説明します。


燃料の貯蔵が容易


 石油火力発電の燃料として使われる石油(重油や原油など)は、貯蔵や運搬が容易であるというメリットがあります。


 例えばLNG火力発電の燃料として使用するLNG(液化天然ガス)は天然ガスをマイナス162度まで冷却した状態で運搬する必要があるため、コストが掛かります。石油は常温のままタンクで保管できるため、運搬や貯蔵の面で有利です。


志布志国家石油備蓄基地

志布志国家石油備蓄基地

需要の変動に即座に対応できる


 石油火力発電は発電量の調整が比較的容易であるため、電力の需給のバランスを取るのに活用されています。


 例えば太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、天候によって発電量が急増あるいは急減することがあります。それに対して電力の需要との間でアンバランスが生じると、停電などが発生します。石油火力発電はそうしたバランスを取るのにも役立つ発電方法です。


石油火力発電のデメリット・問題点


 石油火力発電には以下のようなデメリットもあります。


発電コストがきわめて高い


 石油火力発電は火力発電の中でも最も発電コストの高い発電方法です。


発電方法 発電コスト
石油火力発電 30.6〜43.4円/kWh
LNG火力 13.7円/kWh
石炭火力発電 12.3円/kWh
水力発電 11.0円/kWh
メガソーラー 24.3円/kWh

 日本の一般家庭の電気代は平均27円/kWh程度とされているので、石油火力発電でつくられた電気は販売価格よりもコストが高いと言えます。また、一般にコストが高いと言われている太陽光発電と比較してもコストが高いです。


 石油火力発電の発電コストが高い最大の原因は、燃料コストの高さです。
 30.6〜43.4円/kWhとされている発電コストの内の21.7円は燃料費です。石炭火力発電は燃料費が5.5円、LNG火力でも10.8円と石油火力の半額以下です。


 オイルショック前のWTI原油の取引価格は1バレル3ドル程度でしたが、オイルショック後に40ドル以上での取引が定着したことが燃料費の高さを招いていると言えます。新型コロナウイルスにより取引価格は大幅に下落していますが、それでもなお燃料費は安いとは言い難いです。


環境負荷が大きい


 石油火力発電は現在の主力の「火力発電」であるLNG火力と比較して環境負荷が大きいデメリットもあります。例えばCO2排出量は以下のとおり(出典:電力中央研究所


発電方法 発電時のCO2排出量
LNG火力 476g-co2/kWh
LNG火力
コンバインド
376g-co2/kWh
石油火力発電 695g-co2/kWh
石炭火力発電 864g-co2/kWh

 更に、大気汚染などの原因となる汚染物質の排出量もLNG火力と比較して多いです(出典:九州電力)


発電方法 LNG火力 石油火力 石炭火力
硫黄酸化物 0 1.919g/kWh 0.247g/kWh
窒素酸化物 0.099g/kWh 0.615g/kWh 0.271g/kWh
ばいじん 0 0.010g/kWh 0.010g/kWh
産業廃棄物 0.041g/kWh 1.408g/kWh 49.09g/kWh

 CO2の排出量は石炭火力発電よりも少ないですが、硫黄酸化物や窒素酸化物は石炭火力やLNG火力よりも多く排出しており、環境負荷が大きな発電方法と言えます。


中国電力の玉島発電所

中国電力の玉島発電所

採掘できる地域に偏りがある


 世界の埋蔵量の約3分の2が中東地域に集中しており、日本が輸入する石油の87%(2017年度)は同エリアからの輸入に頼っています。天然ガス(LNG)や石炭と比較して、採掘できる地域が限定されているのが原油です。


 また、ペルシア湾の出入り口に位置するホルムズ海峡は、日本に来るタンカーの約8割が通過すると言われている場所です。日本のエネルギー政策の生命線とも言われています。こうした場所をタンカーが航行できない事態となった場合、日本国内の石油の供給体制に重大な問題が発生する可能性があります。


 原油は「調達できなくなる」リスクが高い化石燃料と言えるでしょう。それに備えて日本では、国内消費量の約200日分以上の石油を備蓄しています。


日本では発電所の老朽化が著しい


 日本では1970年代から原則として石油火力発電の新設が禁止されているため、国内の石油火力発電の老朽化が深刻化しています。


 運転開始から40年を超えた石油火力発電所は、2020年時点で全体の73%。また2030年には96%を超えており、廃止や休止を決める発電所も相次いでいます。


 また、電力不足時のピーク電源として位置づけられていることから、年間の稼働率(設備利用率)も他の火力発電と比較して低くなっており、更にコストを押し上げる要因にもなっています。


設備利用率
2013年度
石油火力発電 44%
LNG火力発電 84%
石炭火力発電 99%



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